
「建築費が高くなるZEH賃貸は、投資に見合うのか」と疑問を持つデベロッパーや賃貸管理会社も多いのではないでしょうか。
こうした疑問がある一方で、賃貸住宅にも一層高い省エネ性能が求められています。2025年4月から、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました(国土交通省)。さらに国は、遅くとも2030年度までに、省エネ基準を住宅ではZEH水準、非住宅ではZEB水準へ引き上げる方針を示しています。そのため、賃貸住宅においても、ZEH-Mへの対応は避けて通れないテーマになりつつあります。
※本記事では、ZEH-M仕様の賃貸住宅を「ZEH賃貸」と表記します。
ZEH賃貸には、建築費が高くなる一方、光熱費の削減や他物件との差別化、入居促進といった賃貸経営上のメリットが期待できます。ただし、ZEHの性能を実際の省エネ効果につなげるには、建物や設備の性能だけでなく、入居後の住まい方や運用も重要です。
本記事では、ZEH賃貸の定義や光熱費、売電の仕組み、メリット・デメリット、補助金について解説します。あわせて、デベロッパー様・賃貸管理会社様・オーナー様に向けて、ZEHの性能を活かし、物件の付加価値を高める方法も紹介します。
|
▼この記事でわかること ・ZEH賃貸(ZEH-M)の定義と、認定に必要な要素・HEMSの役割 ・光熱費や売電の仕組みと、賃貸経営の収益への影響 ・補助金・メリット・デメリットを踏まえた導入判断のポイント ・ZEHの性能を実際の省エネ効果につなげる方法 |
※省エネ基準の義務化について(出典:国土交通省「建築物省エネ法」):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/29.html
|
ZEH賃貸の建築・導入を検討中の方へ ZEHの省エネ性能を実際の効果につなげるには、エネルギーの見える化や設備の制御が鍵になります。三菱地所グループのスマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」は、その具体的な手段の一つです。 詳しい紹介は記事後半で行いますが、ZEH賃貸の付加価値向上やスマートホーム化をご検討の方は、以下よりお気軽にご相談ください。 |
ZEH賃貸(ZEH-M)とは?

ZEH(ゼッチ)とは、高い断熱性能と高効率な省エネ設備、太陽光発電などの創エネを組み合わせた住宅です。住宅で消費する年間の一次エネルギー消費量を、実質的にゼロ以下にすることを目指します。集合住宅向けのZEHは「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」と呼ばれます。
|
▼この章でわかること ・戸建のZEHとの違い(評価の単位) ・ZEH-Mの要件と基本要素 ・HEMSの役割 |
ZEH賃貸①|戸建のZEHとの違い
戸建向けのZEHと集合住宅向けのZEH-Mは、性能を評価する単位が異なります。戸建のZEHが住戸単位で評価されるのに対し、ZEH-Mは共用部を含む住棟全体を単位として評価されます。
集合住宅は、屋根や屋上の面積に対して居住する戸数が多く、太陽光発電による創エネが戸建に比べて不利になりがちです。そのため、集合住宅の実情に合わせた基準として、ZEH-Mという区分が別に設けられています。なお、住棟単位で評価される場合でも、断熱性能を示す外皮は住戸ごとに評価されます。
ZEH-Mには、一次エネルギー消費量の削減率(再生可能エネルギーを含む)に応じて4つの区分があります。目指す区分によって求められる性能が変わるため、まず全体像を早見表で確認します。
区分 |
対象となる階数の目安 |
一次エネルギー消費量の削減率 |
再エネの導入 |
ZEH-M |
主に3階建て以下 |
100%以上 |
必要 |
Nearly ZEH-M |
主に3階建て以下 |
75%以上100%未満 |
必要 |
ZEH-M Ready |
主に4〜5階建て |
50%以上75%未満 |
必要 |
ZEH-M Oriented |
主に6階建て以上 |
20%以上 |
必須ではない |
※削減率は再生可能エネルギーを含む住棟全体の一次エネルギー消費量の削減率です。区分・要件は制度改定で変わるため、最新の公表資料をご確認ください。
ZEH賃貸②|ZEH-Mの要件と基本要素
ZEH-Mの水準を満たすには、大きく3つの要素が必要です。1つ目は高い断熱性能(外皮性能)で、熱の出入りを抑えます。2つ目は高効率な省エネ設備で、空調や給湯、照明などのエネルギー消費を減らします。3つ目は太陽光発電などの創エネで、エネルギーをつくり出します。この「断熱・省エネ・創エネ」の3つが基本の柱です。
あわせて、エネルギーの使用状況を把握するHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入も重要です。HEMSは、補助事業によっては導入が要件となる場合があります。また、ZEH-Mであることを対外的に示すには、第三者機関が省エネ性能を評価するBELS(ベルス)の評価書を取得するのが実務上ほぼ必須です。HEMSの役割については、次の見出しで詳しく解説します。
ZEH賃貸③|HEMSの役割
HEMS(Home Energy Management System)とは、電気やガスなどのエネルギー使用状況を計測し、見える化して管理するシステムです。補助事業によっては導入が要件となる、重要な仕組みです。
ZEHの省エネ性能を実際の効果につなげるためには、エネルギーの使用状況を把握し、制御する仕組みが欠かせません。ZEHは「エネルギー消費量を実質ゼロ以下にする」ことを目指す住宅であり、そのためには、どこでどれだけエネルギーを使い、どれだけ創り出しているかを把握し、制御する仕組みが前提になります。HEMSは、その土台となる役割を担います。
HEMSの役割は、大きく3つに整理できます。1つ目は、エネルギーの使用量と創エネ量を見える化することです。2つ目は、設備を自動で制御し、無駄な消費を減らすことです。3つ目は、使用状況を住まい手に示すことで、節電などの行動を後押しすることです。
ZEHの性能を実際の省エネ効果につなげるうえで、HEMSによる見える化や対応設備の制御は有効な手段の一つです。建物の性能が高くても、それを活かす運用がなければ効果は限定的です。この視点は、記事後半の「価値をさらに高める方法」につながります。
ZEH賃貸で光熱費・電気代はどれくらい下がる?

ZEH賃貸で最も関心が高いのが、光熱費や電気代がどれくらい下がるのかという点です。ここでは、下がる仕組み、実際の削減率の目安、そして「下がらない部分」の3点を順に解説します。光熱費の削減が期待できる一方で、すべての電気代が削減されるわけではありません。この点も、あわせて押さえておく必要があります。
|
▼この章でわかること ・光熱費①|下がる仕組み ・光熱費②|削減率の目安 ・光熱費③|一般家電はZEHの評価対象外 |
光熱費①|下がる仕組み
ZEH賃貸で光熱費が下がる仕組みは、3つの要素の組み合わせによります。まず、高い断熱性能によって、夏は涼しく冬は暖かい状態を保ちやすくなり、冷暖房に使うエネルギーが減ります。次に、高効率な省エネ設備によって、給湯や照明などで消費するエネルギー自体が減ります。
さらに、太陽光発電で電気をつくり、自宅で使う分は、その分だけ電力会社から購入する電力が減ります。この「使う量を減らす」「つくって自給する」の両面が働くことで、光熱費全体が下がります。
光熱費②|削減率の目安
実際の削減率は、物件の仕様や設備、住まい方によって変わりますが、参考となる公表事例があります。大和ハウス工業は、同社のZEH-M仕様の賃貸住宅において、一般的な仕様と比べて年間の光熱費が約36%削減できるとする試算を公表しています。
ただし、こうした数値はあくまで一定の条件(想定世帯や設備の使用状況など)に基づく試算値です。すべての物件や世帯で同じ結果になるわけではありません。入居者に訴求する際は、出典や前提条件とあわせて示すことが大切です。
光熱費③|一般家電はZEHの評価対象外
注意したいのは、ZEHの省エネ性能で安くなるのは、主に空調・換気・給湯・照明にかかるエネルギーだという点です。テレビや冷蔵庫、パソコンなどの一般家電による消費エネルギーは、ZEHの一次エネルギー消費量の評価対象に含まれません。ただし、太陽光発電の自家消費などにより、実際に支払う電気料金が下がる可能性はあります。
そのため、「ZEHにすれば光熱費がゼロになる」というわけではありません。実質的にゼロに近づく可能性があるのは、太陽光の売電収入が電気の使用料を上回るようなケースに限られます。過大な期待を持たせると、入居後の満足度を下げることにもつながります。
そしてもう一つ重要なのが、建物の性能は建てた時点で決まりますが、実際にどれだけ光熱費が下がるかは住まい方次第だという点です。だからこそ、エネルギーの見える化や設備の制御が効いてきます。この点は、記事後半で詳しく解説します。
ZEH賃貸の売電収入のパターン
ZEH賃貸で太陽光発電を導入する場合、使いきれずに余った電力は電力会社に売ることができます(売電)。この売電収入を誰が受け取るかは、賃貸経営の収益設計に直結する重要なポイントです。設備の接続方法や契約形態によって異なりますが、収益の受取方法は、主に次の3つの考え方に整理できます。
売電単価は、国が定めるFIT(固定価格買取制度)で決まります。資源エネルギー庁によると、2025年度の住宅用(10kW未満)の買取価格は15円/kWhです。2025年10月以降に開始する場合は、初期投資支援スキームにより1〜4年目が24円/kWh、5年目以降が8.3円/kWhという段階的な価格が適用されます。10kW以上50kW未満の売電単価は、設置形態や認定年度によって異なります。例えば、2025年度と2026年度では適用単価が異なるため、設備容量だけでなく、屋根設置か地上設置か、認定時期はいつかを確認する必要があります。
なお、出力50kW未満の太陽光発電では、自家消費した後の余剰分を売電する「余剰買取」が基本となります。買取価格は毎年見直されるため、計画時には最新の単価をご確認ください。
※出典:資源エネルギー庁「買取価格・期間等(FIT・FIP制度)」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
|
▼売電収入の3つのパターン ・売電①|オーナー受取方式 ・売電②|入居者売電方式 ・売電③|分配方式 |
売電①|オーナー受取方式
1つ目は、余った電力の売電収入をすべてオーナー様が受け取る方式です。太陽光発電の設備をオーナー様が保有し、発電した電力の余剰分を売電します。
この方式では、売電収入がオーナー様の収益となり、修繕費や次の投資資金に充てることができます。空室の有無に関係なく、発電量に応じた収入が見込める点も特徴です。入居者様は売電収入そのものは得られませんが、光熱費の削減や快適性といった恩恵は受けられます。
売電②|入居者売電方式
2つ目は、各住戸に太陽光発電を接続し、入居者様が余剰電力の売電収入を得る方式です。発電した電力を入居者様が自家消費し、余った分を売電します。
この方式では、入居者様にとって実質的な負担減となるため、入居者募集の際の訴求力が高まります。売電収入は使った電気料金と相殺されるのではなく、別に振り込まれる形が一般的です。他物件との差別化要素として打ち出せるのが強みです。
売電③|分配方式
3つ目は、売電収入をオーナー様と入居者様で分配する方式です。オーナー様は一定の収益を確保しつつ、入居者様にも還元できるため、募集時の訴求力と収益性のバランスを取ることができます。
どの方式を選べるかは、ZEHを手がける建築会社やサービスによって異なる場合があります。また、電力会社との契約(FITによる余剰買取など)や各戸の電力契約の形態も確認が必要です。売電価格や制度は変動するため、計画時には最新の情報を確認することをおすすめします。
ZEH賃貸のメリット【オーナー・入居者別】

ZEH賃貸のメリットを、オーナー様と入居者様の2つの視点から整理します。初期費用は上がるものの、それを上回る価値が期待できる点が、導入を検討する理由になります。
|
▼ZEH賃貸のメリット ・メリット①|差別化による空室対策につながる ・メリット②|収益性・資産価値の維持向上が期待できる ・メリット③|入居者様の負担が減る |
メリット①|差別化による空室対策につながる
1つ目は、物件の差別化による入居促進です。ZEH賃貸はまだ数が少なく、省エネ性能の高さを訴求ポイントにできます。光熱費の安さや快適性は、物件選びで重視されやすく、周辺の一般的な物件との差別化につながります。
省エネ性能や快適性を適切に訴求できれば、入居促進や空室期間の短縮、家賃水準の維持につながる可能性があります。なお、ZEHの省エネ性能に加えて、照明や空調をまとめて操作できるスマートホーム化を組み合わせると、暮らしの利便性も訴求でき、差別化がさらに強まります。この点は記事後半で詳しく紹介します。
メリット②|収益性・資産価値の維持向上が期待できる
2つ目は、収益性と資産価値の面です。売電収入をオーナー様が受け取る方式であれば、その分の収益が上乗せされます。また、光熱費の安さや快適性を訴求できることで、家賃水準の維持・向上や空室率の低下につながり、賃貸経営の収益を下支えします。
初期費用については、後述する補助金を活用することで負担を抑え、投資回収を早めることができます。投資回収は、単年の設備費だけでなく、空室期間の短縮や退去の減少による損失の抑制、家賃維持といった複数の効果を、数年単位で見て判断するのが現実的です。
投資判断にあたっては、以下のような費用と効果の項目を確認し、総合的に検討することが大切です。金額は物件や条件で変わるため、それぞれ見積もりや試算を取り、複数年で判断します。
確認する項目 |
確認するポイント |
追加の建築費 |
一般的な賃貸住宅と比べて増える建築費(断熱・高効率設備・太陽光など) |
利用できる補助金 |
活用できる補助制度と、対象要件・補助額の目安(年度で変動) |
見込める売電収入 |
売電方式(オーナー受取など)と、想定される売電単価・発電量 |
家賃・空室への効果 |
差別化による賃料水準の維持・向上、空室期間の短縮の見込み |
設備の維持・更新費 |
太陽光・HEMSなどの点検・更新にかかる費用(長期修繕計画に織り込む) |
省エネ基準は2025年4月にすでに義務化され、2030年度までにZEH水準へ引き上げられる方針です。これを踏まえると、先行してZEH水準に対応しておくことは、将来の省エネ基準強化に備え、物件の競争力や資産価値を維持しやすくなる可能性があります。
メリット③|入居者様の負担が減る
3つ目は、入居者様にとってのメリットです。ZEH賃貸では、高い断熱性能や省エネ設備により、入居者が過度に意識しなくても光熱費の削減が期待できます。高い断熱性能により、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境が保たれます。
また、断熱性能の向上によって住戸内の温度差が小さくなれば、急激な温度変化による身体への負担を軽減できる可能性があります。適切な換気と組み合わせることで、結露やカビの発生を抑えやすくなります。
ZEH賃貸のデメリット・注意点

導入を判断するうえでは、メリットだけでなくデメリットや注意点も押さえておく必要があります。ここでは3つの観点から、それぞれの対策とあわせて解説します。
|
▼デメリットと注意点 ・デメリット①|建築費が上がる ・デメリット②|依頼できる建築会社が限られる ・デメリット③|設備のメンテナンスが増える |
デメリット①|建築費が上がる
1つ目は、建築費が上がることです。断熱材や高効率設備、太陽光発電などを導入する分、一般的な賃貸住宅よりも初期費用が高くなります。初期費用が増えると借入額も増える傾向があるため、返済計画を含めた事業計画が必要です。
対策としては、補助金の活用が有効です。また、光熱費削減や入居促進による長期的な回収を見込んで、単年ではなく複数年で採算を判断することが大切です。
デメリット②|依頼できる建築会社が限られる
2つ目は、依頼できる建築会社が限られることです。ZEH-Mの補助金を活用するには、SII(環境共創イニシアチブ)にZEHデベロッパーとして登録された建築主・建築会社であることが要件になる場合があります。また、屋根への太陽光設置により、デザイン面で制約が出ることもあります。
対策としては、ZEH-Mの実績が豊富で、建てた後も長く付き合える会社を選ぶことが重要です。設備のメンテナンスまで見据えて、パートナーを選定しましょう。
デメリット③|設備のメンテナンスが増える
3つ目は、設備のメンテナンスが増えることです。太陽光発電やHEMSなど、一般的な賃貸にはない設備が加わる分、点検や更新の手間と費用が発生します。また、売電価格は制度の見直しにより下落傾向にある点も、収支計画では考慮が必要です。売電価格や買取期間は制度改定によって変わるため、将来の売電収入を固定的に見込まないことも重要です。
対策としては、長期修繕計画にあらかじめ設備の更新費用を織り込んでおくこと、そして保守体制の整った会社を選ぶことが挙げられます。
ZEH賃貸で使える補助金(ZEH-M支援事業)

ZEH賃貸の初期費用の負担を抑えるうえで、補助金は重要な選択肢です。集合住宅向けには、環境共創イニシアチブ(SII)が実施する「集合住宅の省CO2化促進事業(ZEH-M支援事業)」があり、階数区分ごとに公募されます。
※以下は2025年度(令和7年度)の制度を参考として紹介しています。補助額や対象要件は年度によって変更されるため、申請時には必ず最新の公募要領をご確認ください。
|
▼補助金のポイント ・補助金①|対象と補助額の目安 ・補助金②|いつ申請するか ・補助金③|他制度と併用できるか |
補助金①|対象と補助額の目安
集合住宅向けのZEH-M補助は、建物の階数区分(低層・中層・高層)ごとに公募が分かれており、区分によって対象となる水準が異なります。令和7年度の例では、対象水準と補助額は次のように整理されます。
区分(階数の目安) |
対象となる水準の例 |
補助額の目安(令和7年度) |
低層(1〜3階) |
ZEH-M/Nearly ZEH-M |
定額40万円/戸(棟あたり上限あり) |
中層(4〜5階) |
上記+ZEH-M Ready |
40万円/戸(ハイグレードは50万円/戸) |
高層(6階以上) |
ZEH-M Oriented以上 |
経費の1/3以内、40万〜50万円/戸 |
※出典:環境共創イニシアチブ(SII)令和7年度 各ZEH-M支援事業 公募要領。補助額・上限・要件は年度で変わるため、申請前に最新の公募要領で必ずご確認ください。
SII ZEH・ZEH-M補助事業:https://sii.or.jp/zeh07//ZEHデベロッパー登録:https://zehweb.jp/registration/developer/public.html
この補助は、建築主やデベロッパーといった事業者向けの制度です。申請にはSIIへのZEHデベロッパー登録が必要で、入居者が個別に部屋ごとに申請するものではありません。
補助金②|いつ申請するか
申請にあたっては、SIIへのZEHデベロッパー登録が要件となる場合があります。ここで特に注意したいのが、交付決定の通知を受け取る前に発注・着工した工事は、補助の対象外になるという点です。スケジュールを誤ると補助金を受けられなくなるため、計画段階での確認が欠かせません。
また、ZEH-MであることをBELS評価書で示す必要があるケースもあります。申請は要件が細かく煩雑なため、こうした手続きに慣れた会社に任せると、負担を減らせます。
補助金③|他制度と併用できるか
補助金の併用については、原則として、国の他の補助金を同一の工事に重複して使うことはできません。ただし、対象となる工事が異なる場合には、別の事業に申請できるケースもあります。また、自治体が独自に用意している補助金とは、併用が可能な場合があります。
併用の可否は制度や年度によって細かく定められているため、最新の公募要領で必ず確認するようにしてください。
ZEH賃貸を建てる際の進め方

最後に、ZEH賃貸を実際に計画する際の進め方を、3つのステップで整理します。補助金の要件が絡むため、順序と時期が重要になります。
|
▼導入の進め方 ・進め方①|目指す水準を決める ・進め方②|依頼する会社を選ぶ ・進め方③|公募に合わせて計画する |
進め方①|目指す水準を決める
まず、目指すZEH-Mの水準を決めます。前述のとおり、補助金の対象となる水準は、低層・中層・高層といった階数区分によって異なります。建てようとする物件の階数区分を踏まえ、補助の要件から逆算します。そのうえで、目指す区分(ZEH-M・Nearly ZEH-M・ZEH-M Ready・ZEH-M Orientedなど)を定めます。
進め方②|依頼する会社を選ぶ
次に、依頼する会社を選びます。補助金を活用する場合、SIIに登録された建築主・建築請負会社であることが要件になる場合があります。ZEH-Mの実績が豊富かどうか、そして建てた後のメンテナンスまで長く付き合えるかどうかを基準に選びましょう。
進め方③|公募に合わせて計画する
最後に、補助金の公募スケジュールに合わせて計画を組みます。前述のとおり、交付決定の前に発注・着工した工事は補助の対象外になります。公募の開始時期から逆算して、設計や申請を進めることが重要です。BELS等の評価取得のタイミングも、あらかじめ計画に織り込んでおきましょう。
|
ZEH賃貸の付加価値向上について相談する ZEHの性能を実際の省エネ効果につなげる方法や、スマートホーム化による付加価値向上について、お気軽にご相談いただけます。 |
ZEH賃貸の価値をさらに高める方法

ここまで見てきたように、ZEHの性能は建てた時点で決まりますが、実際にどれだけ省エネできるかは住まい方や運用によって変わります。HEMSはZEH-Mの性能を実際の省エネ行動につなげる有効な手段であり、補助事業によっては導入が要件となります。その見える化や制御をどう活かすかで、運用時の効果は変わります。
つまり、ZEHの性能を「実際の省エネ効果」につなげるには、エネルギーの見える化、設備をまとめて操作できる仕組み、創エネの効率的な活用が鍵になります。ここでは、その3つの方法を解説したうえで、それらをまとめて実現する手段を紹介します。
|
▼価値をさらに高める3つの方法 ・付加価値①|使用量が見える化できる ・付加価値②|設備をまとめて操作できる ・付加価値③|創エネを効率的に使える |
付加価値①|使用量が見える化できる
1つ目は、エネルギー使用量の見える化です。電気・ガス・水道の使用量や、太陽光発電による発電量を、アプリなどでまとめて確認できるようにします。目標に対する進捗や、月末時点の使用量の予測が分かると、住まい手の節電行動につながります。
ZEHの高い省エネ性能を、入居者様が数値として実感できる形にすることが、満足度を高めるうえで重要です。
付加価値②|設備をまとめて操作できる
2つ目は、設備をまとめて操作できるようにすることです。照明や空調、カーテンなどを一括で操作できると、暮らしの快適性が高まります。あらかじめ設定したシーンでまとめて動かしたり、位置情報と連動させたりすることで、消し忘れも防げます。
こうした操作性は、消費電力の無駄を減らすことにもつながり、省エネにも寄与します。ZEHの高い断熱性能と組み合わせることで、住み心地の訴求力がさらに高まります。
付加価値③|創エネを効率的に使える
3つ目は、創エネの効率的な活用です。蓄電池を設置している住戸では、天気予報(日射量の予測)に応じて充電を制御することで、太陽光でつくった電気の自家消費を高められます。電力会社から購入する電力(買電)を減らすことで、入居者様の電気代削減にもつながります。
太陽光や蓄電池といった創エネ設備を活かしきるには、それらを制御・管理する仕組みが欠かせません。ここまで挙げた見える化・操作・創エネ活用の3つをまとめて実現する手段の一つが、次に紹介するサービスです。
ZEHの価値を高める「HOMETACT」

見える化・操作・創エネ活用をまとめて実現する具体的な手段の一つが、三菱地所グループが提供する総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」です。ZEH賃貸の性能を、実際の省エネ効果や暮らしの快適性につなげるうえで役立ちます。
「HOMETACT」は、HEMS機能により、電気・ガス・水道の使用量や太陽光の発電量を一括で管理できます。使用量の予測や、蓄電池を日射量予測に応じて自動制御する機能もあり、創エネの効率的な活用を後押しします。
また、特定のメーカーに依存せず、多様な機器に対応するオープンなプラットフォームである点も特徴です。鍵・照明・空調など複数メーカーの機器を1つのアプリでまとめて管理でき、後から機器を追加・変更することもできます。
導入にあたっては、設計支援から導入設定、管理、サポートまでの4段階で支援を受けられます。365日、10時〜21時に有人のコールセンターが入居者様からの問い合わせに対応するため、管理会社様やオーナー様が対応を抱え込む必要がありません。新築のビルトインから既築の後付けまで対応できる点も、幅広い物件で活用できる理由です。
>>ZEH賃貸の価値を高める「HOMETACT」の詳細はこちら
まとめ

ZEH賃貸(ZEH-M)は、高い断熱性能と省エネ設備を基本とし、区分に応じて創エネを組み合わせる集合住宅です。一次エネルギー消費量の削減率などに応じて4つの区分があります。光熱費の削減が期待できますが、一般家電の電気代は変わらず、完全にゼロになるわけではない点は正しく理解しておく必要があります。
売電収入は、オーナー受取・入居者売電・分配の3つの方式があり、収益設計に直結します。差別化による空室対策や収益性の向上といったメリットがある一方、建築費の増加などのデメリットもあり、補助金の活用や複数年での回収を前提とした事業計画が重要です。
そして最も大切なのは、ZEHは建てて終わりではないということです。HEMSによる見える化や設備の制御を通じて、性能を「実際の省エネ効果」につなげてこそ、その価値が発揮されます。
※本記事は2026年8月時点の情報を基に執筆しております。補助額の表は2025年度の公募内容を参考例として掲載しており、現在の補助額や要件を示すものではありません。なお、補助金・制度・売電価格は変動するため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
参考・出典一覧
本記事の作成にあたり参照した主な一次情報は以下のとおりです。制度・補助額・売電価格は改定されるため、必ず最新の公表資料をご確認ください。
- 国土交通省「住宅:建築物省エネ法 最新の法令」(省エネ基準の適合義務化):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/29.html
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(FIT・FIP制度)」(売電単価):https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
- 環境共創イニシアチブ(SII)「ZEH・ZEH-M補助事業」(補助金の内容・公募要領):https://sii.or.jp/zeh07/
- SII「ZEHデベロッパー登録公募」(登録要件・公募期間):https://zehweb.jp/registration/developer/public.html